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【奇跡のリンゴ】  志賀内康弘

石川拓治著「奇跡のリンゴ」幻冬舎という本があります。 

NHKの人気番組「プロフェッショナル仕事の流儀」でも紹介されたことがあるので、ご存じの方も多いことでしょう。 
100%不可能だと言われていた無農薬でかつ、有機肥料も一切使わないリンゴを育てている木村秋則さんの人生を綴ったものです。

木村さんは無農薬リンゴを作るために、三十年の歳月をかけました。 
それは、言葉では語れないほどの苦難の連続でした。 

ほとんどの財産を失い、食べるのにも困って町のキャバレーで呼び込みの仕事をしながら食いつなぎました。 
リンゴの木は、病気にかかって次々と枯れ始めます。

それでも、何か方法があるに違いないと、農薬に代わるあらゆる物を試して病害虫と戦います。 
ついに諦めて、「もう死のう」と覚悟して山奥に入ったことがきっかけで、
自然のままの土作りに気づき、やがて無農薬リンゴに成功します。 

そんな木村さんが、トウモロコシを作っていたときのお話です。 
せっかく作ったトウモロコシが、タヌキに食べられてしまう。 

そこで、虎バサミの罠をしかけたら、仔ダヌキが掴まった。 
しかし、その脇で、母親タヌキが木村さんが近づいても逃げないで仔ダヌキを見守っている。 
可愛そうになって虎バサミを外してやった。 

すると、母親タヌキがいつまでも、仔ダヌキの傷のところを一生懸命になめてやっている。 
「罪なことをしたなぁ」と思ったそうです。 

そこで、木村さんは、歯の欠けたようなった見てくれの悪いトウモロコシを、収穫たびに畑の脇に置いてくるようにした。 
普通は、エサなんかやると、もっと悪戯をするのではと思うが、ピタッと被害が収まったというのです。 

実は、この考え方は、木村さんの農法と深く関わっています。 
木村さんのリンゴ畑は、人の胸の高さほども伸びた雑草でぼうぼう。 

そこは、バッタ、ハチ、カエル、野ネズミ、ウサギの天国。 
畑というよりも、人の手の入らない野山の風景だといいます。 

つまり、自然のままの状態で、自然と共生することで、農薬も肥料も使わないリンゴを作ることに成功されたのでした。 
病害虫と戦うのではなくて、共生するのです。 

こんなエピソードが紹介されています。 
絶望の中で、枯れかけたリンゴの木、一本、一本に 
「枯れないでくれ」と頼んで回ったときのこと。 

さすがに周囲の農家の人たちには、その姿を見られたくなかった。 
とにかく、無農薬リンゴを作るために貧乏のどん底になって「気が狂った」と思われていたからです。 

頼みを聞いてくれたのか、枯れずに残ってくれたリンゴの木があった。 
しかし、あとで、こんな事実に気づいたそうです。 

木村さんが声をかけなかった木は、一本残らず枯れていたということに。 
思いやりの心は、人間だけじゃなくて、動物や植物にも通じる。 

我々人間も、自然の中の一部なんだなぁ、と感じました。 
それも、ちっぽけな一員であると。 
 
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